狩衣と摺衣の違いとは?古典に出てくる平安時代の衣服をわかりやすく解説
妖練習 中学古文 歴史的仮名遣い スーパードリル 330
古典や『源氏物語』を読んでおりますと、平安時代の衣服を表すさまざまな言葉が出てまいります。
袿、衵、唐衣、裳、直衣。
そして、男性の衣服として覚えておきたいのが、
狩衣(かりぎぬ)
でございます。
一方、古典には
摺衣(すりごろも・すりぎぬ)
という言葉も登場します。
どちらも「衣」という字が入っておりますが、何が違うのでしょうか。
狩衣と摺衣の違いとは??
まずは、狩衣と摺衣の違いを整理しておきましょう。
狩衣は、衣服の種類を表す言葉でございます。
一方、摺衣は、植物の色を摺りつけて模様を染めた衣服を表します。
| 項目 | 狩衣 | 摺衣 |
|---|---|---|
| 読み方 | かりぎぬ | すりごろも・すりぎぬ |
| 意味 | もとは狩猟などに用いた衣服 | 植物の汁などで模様を染めた衣服 |
| 特徴 | ゆったりした袖、袖口の紐、脇の開いた仕立て | 草木や花などの染め模様 |
| 分類の基準 | 衣服の形・用途 | 染色方法 |
| 現代風のイメージ | 貴族のカジュアルウェア | 植物を使った手染めの服 |
一番大切なのは、狩衣と摺衣は、同じ基準で分類された衣服ではないという点でございます。
狩衣は、どのような形の服なのか、何のために着られた服なのかを表しています。
一方、摺衣は、どのように模様を染めた服なのかを表しています。
この違いを押さえると、二つの言葉が混同しにくくなりますわ。
狩衣(かりぎぬ)とは??
狩衣とは、もともと狩猟などの屋外活動に用いられ、のちに貴族男性の普段着として広まった衣服でございます。

屋外では、宮中の正式な装束よりも、動きやすい服装が求められます。
そのため、狩衣には活動しやすい仕立てが取り入れられておりました。
特に特徴的なのが、脇の開いた構造や、袖口に付けられた紐でございます。
袖口に紐がある
狩衣の特徴の一つが、袖括り(そでくくり)でございます。
これは、袖口に通された紐のことです。
もともとは袖口を絞り、動きやすくするために使われました。
袖が大きく広がっていると、狩猟などの活動中に邪魔になることがございますわね。
そこで、紐で袖口をまとめられるようにしたのでございます。
ただし、狩衣が貴族の日常着として広まるにつれ、袖括りには装飾的な役割も加わっていきました。
平安貴族の普段着になった
狩衣の面白いところは、狩猟用の衣服が、やがて貴族の普段着になったことでございます。
平安時代の男性貴族には、束帯のような正式な装束がございました。
しかし、いつもそのような格式の高い服装をしていたわけではございません。
私的な場では、より気軽な服装も用いられました。
狩衣も、そのような装いの一つとして広まっていったのでございます。
現代風に申しますと、もともとアウトドア用だった服が、日常のファッションとして定着したようなものです。
摺衣(すりごろも・すりぎぬ)とは
摺衣とは、草木の葉や花の汁などを布に摺りつけて、模様を染め出した衣服のことでございます。

摺衣の特徴は、植物の色を利用して模様を作るところにあります。
たとえば、草木の葉や花を布に摺りつけると、その色が布に移ります。
また、植物から取り出した汁を使って模様を染めることもございました。
このような染色方法を、摺染(すりぞめ)と呼びます。
現代風に申しますと、植物を使った手染めの模様入り衣服でございます。
山藍や月草などが使われた
摺染には、植物の色が利用されました。
たとえば、山藍(やまあい)や月草(つきくさ)などが知られております。
月草は、現在のツユクサを指す古い呼び名でございます。
こうした植物の色を布に移し、模様を染め出したのでございます。
つまり、摺衣には自然の植物の色が生かされていたのです。
現代の植物プリントに近い
摺衣を現代風にたとえるなら、植物の葉や花を使った布のプリントでございます。
現代でも、葉を布に当てて色や形を写し取る染色方法がございますわね。
摺衣も、それに近い発想で理解するとわかりやすいです。
ただし、摺染の技法は時代とともに変化しており、後世には型紙や版木を使う方法も発達しました。
古典で出てくる摺衣は、まず植物の色で模様を染めた衣服として覚えるとよろしいです。
狩衣と摺衣は何が違うのか
ここで、二つの違いをもう少し詳しく考えてみましょう。
狩衣も摺衣も衣服の名前ですが、名前が表しているものは同じではございません。
狩衣は衣服の形と用途
狩衣は、特定の形や仕立てを持つ衣服でございます。
脇が開いた構造や、袖口の紐などが特徴です。
もともと狩猟に使われ、のちに貴族の普段着として広まったという歴史もございます。
つまり狩衣は、衣服の種類として考えることができます。
摺衣は染め方
一方、摺衣は、植物の色を布に摺りつけて模様を染めた衣服です。
そのため、狩衣のように特定の仕立てを表す名前ではございません。
どのように模様をつけたかという点が重要なのでございます。
形の名前と加工の名前
現代の衣服で考えてみましょう。
たとえば、パーカーは衣服の形を表す名前でございます。
一方、草木染めの服という言葉は、染色方法に注目した呼び名です。
パーカーと草木染めの服は、まったく別の分類ではありません。
草木染めのパーカーというものも考えられますわね。
これと同じように、狩衣は形や用途に関する名前、摺衣は染色方法に関する名前なのでございます。
このように考えると、両者の違いがはっきりいたします。
狩衣は必ず無地だったのか
狩衣というと、もともと狩猟用の衣服だったため、地味で実用的な服を想像するかもしれません。
しかし、平安貴族の普段着として広まった狩衣には、美しい色や模様のものもございました。
狩衣にも色や模様があった
狩衣は、もともと狩猟などの活動に使われた衣服です。
けれども、貴族の衣服として発展するにつれ、素材や装飾にも変化が生まれました。
絹織物を用いた狩衣も現れ、色や模様に工夫を凝らしたものも作られるようになります。
つまり、狩衣は無地の作業着とは限らないのでございます。
実用服がファッションになった
狩衣の歴史は、現代のファッションにも通じるところがございます。
もともと動きやすさのために作られた服が、日常の装いとして広まる。
そして、色や模様、素材にこだわるようになる。
このような変化は、現代のスポーツウェアやアウトドアウェアにも見られますわね。
狩衣も、実用性を持った服から、貴族の美意識を表す装束へと発展していったのでございます。
摺衣は狩猟用の衣服だったのか
摺衣は、狩衣と同じく衣服を表す言葉ですが、必ずしも狩猟用という意味ではございません。
摺衣は、植物の色を摺りつけて模様を染めた衣服です。
そのため、名前だけで着用する場面や用途が決まるわけではありません。
摺衣は狩猟専用ではない
摺衣の「摺」は、染色方法を表しております。
そのため、摺衣という言葉そのものには、狩猟用という意味はございません。
狩衣がもともと狩りに使われた衣服であるのとは、この点が違います。
古典では模様にも注目する
摺衣が古典に出てきたら、どのような模様が染められているのかに注目するとよろしいです。
植物の葉や花を使った模様。
自然の色を生かした染色。
そうした特徴を思い浮かべると、衣服の様子が具体的に見えてまいります。
摺衣は古典にも登場する
摺衣は、実際に古典作品にも登場する言葉でございます。
特に『万葉集』や『枕草子』などに用例がございます。
万葉集の摺衣
『万葉集』には、摺衣を詠み込んだ和歌がございます。
摺衣は、植物の色を布に摺りつけて模様を染めた衣服です。
そのため、歌の中では、衣服そのものの意味だけでなく、色が移ることや模様がつくことなどが、言葉の表現と結びつく場合もございます。
古典では、衣服の名前が和歌の表現にも利用されていたのでございます。
枕草子の摺衣
『枕草子』にも、摺衣の用例がございます。
清少納言は、宮中の人物や装束、行事の様子を細やかに描いております。
その中に摺衣という言葉も登場します。
つまり摺衣は、古典文学の中でも、衣服の特徴を伝える言葉として使われていたのでございます。
狩衣と摺衣を現代風にたとえると
狩衣と摺衣を現代風にたとえるなら、狩衣はアウトドア由来の普段着、摺衣は植物を使った染め模様の衣服でございます。
狩衣はアウトドアウェアが普段着になったもの
狩衣は、もともと狩猟などの屋外活動に用いられました。
それが、のちに貴族の普段着として広まっていきます。
現代でも、アウトドア用のジャケットやスポーツウェアを普段着として着ることがございますわね。
それと似た変化として考えるとわかりやすいです。
摺衣は植物プリントの衣服
一方、摺衣は植物の色を使って模様を染めた衣服です。
現代風には、草木染めや植物を使った手染めの模様入り服に近いです。
形よりも、模様の作り方に注目した名前でございます。
比べる基準が違う
狩衣と摺衣の違いを現代風にまとめるなら、次のようになります。
- 狩衣:アウトドア由来の衣服の種類。
- 摺衣:植物の色で模様を染めた衣服。
つまり、狩衣は形や用途、摺衣は染め方に注目した名前です。
これが、二つを理解するうえで一番大切なポイントでございます。
古典で狩衣・摺衣が出てきたら
古典で狩衣や摺衣が出てきたら、まずはそれぞれの意味を確認しましょう。
そのうえで、文章の中でどのような役割を持っているのかに注目すると、理解が深まります。
狩衣なら男性の服装に注目する
狩衣が出てきたら、男性がどのような場面でその衣服を着ているのかを考えましょう。
屋外で活動しているのか。
私的な場でくつろいでいるのか。
どのような身分の人物なのか。
そうした点に注目すると、場面の雰囲気が見えやすくなります。
摺衣なら模様に注目する
摺衣が出てきたら、植物の色を使って模様を染めた衣服として読みましょう。
どのような色や模様なのか。
誰が着用しているのか。
どのような場面なのか。
そうした点に注目すると、古典の衣服描写がより具体的に理解できます。
衣服の名前だけでなく意味を読む
古典では、衣服の名前が人物の身分や場面の格式を示すことがございます。
また、色や模様が、美意識や人物の印象を表すこともあります。
そのため、狩衣や摺衣をただの服の名前として覚えるだけでは、少しもったいのうございます。
なぜその服を着ているのか。
どのような模様なのか。
その服から、どのような人物像が見えてくるのか。
そこまで考えると、古典の世界がより深く読めるようになりますわ。
まとめ:狩衣と摺衣の違いを整理
最後に、狩衣と摺衣の違いを整理しておきましょう。
狩衣のポイント
- 狩衣は「かりぎぬ」と読む。
- もともとは狩猟などの屋外活動に用いられた衣服。
- のちに平安貴族男性の普段着として広まった。
- 脇の開いた仕立てや袖括りの紐などが特徴。
- 美しい色や模様のものも作られた。
- 現代風には、アウトドア由来のカジュアルウェアに近い。
摺衣のポイント
- 摺衣は「すりごろも」「すりぎぬ」と読む。
- 草木の葉や花の汁などで模様を染めた衣服。
- 摺染という染色方法に関わる言葉。
- 山藍や月草などの植物が使われた。
- 特定の形の衣服を指す名前ではない。
- 現代風には、植物を使った手染めの模様入り衣服に近い。
一言でいうと
狩衣は、もともと狩猟などに用いられ、のちに平安貴族の普段着となった衣服でございます。
摺衣は、草木の葉や花の色を使って模様を染めた衣服でございます。
狩衣は衣服の形や用途、摺衣は染め方に注目した名前と覚えるとよろしいです。
それでは、ごきげんよう
妖練習 中学古文 歴史的仮名遣い スーパードリル 330